溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


「おっ、お帰りなさい。帰られていたんですね」

「ああ、今帰った。……? なんだ、どうした」


 私が驚いたようなリアクションを取ったからだろうか。晃汰さんは小首を傾げる。

 まずい、晃汰さんに気を取られて、目を離してしまった。


「あっ……いなく、なってる……?」


 慌てて振り返ったものの、蜘蛛は今の今までいたところに姿はなく、忽然と姿を消していた。


「いない? なにがいない」

 部屋に入ってきた晃汰さんが訊く。


「それが、荷物の中に虫が、蜘蛛が入っていたようで……今、出てきてそこに」

「蜘蛛?」


 私が指さした段ボールのそばまで行き、晃汰さんは箱を動かしたりして蜘蛛を探し始める。

 しかし、小さな蜘蛛はあっという間に隠れてしまったらしく、その姿は見当たらない。


「隠れたみたいだな」

「いない、ですか?」

「ああ、それらしき姿は見当たらないな」


 やっぱり案の定見失ってしまった。

 となると、またいつ突然姿を現すのかわからない。

 またゾワッとする瞬間がくるかもしれないと思うだけで鳥肌が立った。

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