溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


「あの、搬送された患者様は……?」

「ああ、問題ない。田代先生が休まれたからな。後藤単独では多少不安があったんだろう。でも、助手についてオペに入ったが問題なさそうだった」


 心臓血管外科に所属する俺より先輩のドクターが、家族の体調不良のため当直を急遽欠勤した。

 一緒に当直で勤務予定だった三年目のドクターが、搬送の知らせを受け急に不安になり俺を呼び出したのだ。

 こういうことがそれなりの頻度であるから、酒は絶対に安心な日でないと口にしないようにしている。


「そうでしたか。それはよかったです。お疲れ様でした」

「お疲れ様。もうそろそろ寝るのか」

「あ、はい。そうですね。明日も早いので」


 そう言った千尋はなぜだかまた小さなため息をつき、部屋の隅にある大きな荷物を解いていく。

 そこから出てきたのが予想もしなかった布団一式で、思わず「えっ」と声を上げてしまった。

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