溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
そんな時だった。
突然下の名前を呼ばれ、ハッと顔を上げる。
そこにいたのは、以前お見合いをさせてもらった小室さん。
頭を下げ、私のもとへと歩み寄ってくる。
「こんばんは。ご無沙汰しております」
丁寧な挨拶と共に頭を下げられ、私もぺこりと頭を下げて「こんばんは」と挨拶をする。
こんなところでバッタリ会ってしまうなんて内心驚いた。
そして、なんとなく気まずい気持ちが押し寄せる。
父親の会社のために資金援助をお願いする目的で進めていた政略結婚のお見合い相手だけど、結局は縁談をお断りする結果になった。
お見合いの席の後、母が倒れ、その回復を待ってから縁談を進めようと一度は話がまとまっていたからだ。
それなのに、晃汰さんと結婚することになりお断りをさせてもらった。特に理由は伝えなかったけれど、まさかすでに結婚しているなんて思いもしないだろう。