溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「こんなところで千尋さんにお会いできるなんて、僕はラッキーだな」
どこか弾んだ声で言われ、愛想笑いを浮かべる。
「その後、お母様の体は?」
「あ、はい。お陰様でもうもとの生活を送っています。その節はご心配をおかけしました」
「そうなんだ。それはよかった。ところで……?」
小室さんの視線が、背後のウエディング衣装店に向けられた。
私がここから出てきたことを目撃していたのだろう。
「あ……実は、ご縁があり、結婚しまして」
どこか気まずい思いはあるけれど、別に隠す必要はまったくない。
むしろ、この際はっきりとお伝えしておけば、今後こうしてバッタリ会うことがあっても今日のような思いをしなくていい。
私から結婚を報告された小室さんは表情ひとつ変えず微笑を浮かべた。
「そうでしたか。もしかして、お相手はお仕事の関係先で?」
「あ……はい。勤め先の方と」
「そうだったんですね」
小室さんの表情から笑みが消え、どこか真剣な面持ちに変化した。
「結婚も、仕事の延長……という形ですか。ではその彼に、資金援助をしてもらうことになったのですか?」
「え……」