溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


「だから、できればあなたと、千尋さんと一緒になりたかった」


 躊躇ないストレートな言葉に戸惑う。小室さんに向けていた視線が急に彷徨い始めてしまった。


「僕は、あなたの戸籍に傷がついていても構わない。僕と一緒になることを、今からでも考えてもらえませんか?」


 衝撃的な告白を受け、彼の目を見つめたまま固まってしまう。そんなことをこんな場所で言われるとは誰も思いもしない。

 要するに、離婚をして自分と再婚してほしい。そう言われているということだ。


「相手は、千尋さんのことをちゃんと愛してくれていますか? いませんよね?」


 ずきっと胸が痛む。

 晃汰さんと私は、お互いに愛し合って一緒になったわけではない。

 身を固めて子どもが欲しい晃汰さんと、結婚して父の会社を助けてほしい私。

 互いのメリットが一致し、仕事上長く一緒にいたからという理由だけで夫婦になった。

 そこに心は、感情は動いていない。

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