溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 駐車場から建物に向かって歩き出してすぐ、不意に手を掴まれる。そのまま繋がれた手に、晃汰さんを見上げた。

 わずかに手を引かれ、晃汰さんが私の耳元に唇を寄せる。


「聞きそびれていたが、体は大丈夫か」

「え? 体、ですか……?」

「朝方まで抱き潰してしまったからな」


 さらっとそんな際どいことを口にされ、一気に顔面温度が急上昇。

 赤面し、なんと言葉を返せばいいのか戸惑って開いた口をぱくぱくさせる私を、晃汰さんはクスッと笑う。


「随分といい反応するな」

「だ、だってですね、そんなことこのタイミングで訊かれるなんて。しかもさらっと」

「仕事中よりはいいだろう?」

「それはそうですけど!」


 またふっと笑った晃汰さんは「で?」と、今度は落ち着いたトーンで答えを求める。

 確かに〝抱き潰す〟なんて言葉通りな上、寝不足も手伝って今日は普段よりお疲れなことは確か。

 でも、どこか具合が悪いことはない。

 どちらかというと、体より心のほうが忙しなく働いて大丈夫ではない気がする。

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