溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


「そうか。それは結構仲良くなったんだな」

「はい。お互い同じ立場だし、これからいろいろ助け合えたらって菜々恵さんに言ってもらえて。でも、帰り際に詩ちゃんに言われちゃいましたね。ママとばっかり話してないで遊んでねって。さすが女の子、めざといですね」


 千尋は今さっきの出来事を振り返り、ふふっと笑う。


「言ってたな。確かに、よく見てる」

「今度お邪魔した時はもっと一緒に遊びたいです」


 これまで仕事上も含め、千尋が小さな子どもと関わっている姿はほとんど見たことがない。

 だから、今日の光景はなんだか新鮮で目新しかった。

 子どもに対して見せる優しい表情、話し方。

 もしいずれ俺たちのもとに子どもが生まれたら、千尋は毎日こんな顔を見せてくれるのだろうか。

 そんな未来を密かに想像していた。

 夫婦になって四カ月。

 関係は順調で、特に大きな問題もなく穏やかに日々を過ごしている。

 だけど、なにかが欠けているような、そんな感覚がずっとある。

 彼女の気持ちを無視したような形で強引に始めた今の関係。

 だから、千尋の気持ちがこっちを向いていないのは仕方ない。

 少しずつ夫婦という関係を深めていって、いつか彼女に愛してもらえたら……。

 俺の抱いている想いが少しでも伝わって、それを受け止めてもらえたらそれ以上に幸せなことはない。

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