溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
もしかしたら妊娠していて、それで体調不良なのかもしれない。だとすれば、この体調の変化に説明がつく。
説明書通り検査薬を使用し、結果が出てくるのをジッと見つめながら待つ。
「え……?」
トイレの個室の中で、私の声がぽつりと響いた。
検査薬は、陽性なら窓に二本の線が出ると書いてある。
しかし、今使用した検査薬には終了の線が一本しか出てきていない。
もしかしたら後からじわっと浮き出てくるのかと思いしばらく待ってみたけれど、結局線がもう一本出ることはなかった。
妊娠ではなかったことに、体の力がふっと抜けるような感覚に陥る。妊娠だと思い込んだような状態で検査をしたからだ。
でも、結果は見事にハズレ……。
この体調不良はやっぱり夏バテのようだ。
それがわかると急に体の調子ももとに戻ったようで、時計に目を向ける。
時刻は十一時半を回ったところ。
今から出勤して午後は通常通り業務にあたれると思われる。
スマートフォンを手に、メッセージアプリを開く。
【お粥ありがとうございました。体調も戻ってきたので、今から出勤します。今から支度して出ますね】
そう晃汰さんにメッセージを送り、仕事に出かける用意を始めた。