溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 それが、結婚半年、このまま一年、二年……時間が経過しても一向に子どもができなかったら、私は用なしではないだろうか。

 もしかしたら私が妊娠しにくい体質だったら……晃汰さんは結婚したことを後悔するに違いない。

 水瀬の病院を後継する跡取りとして、それは大問題となり、婚姻関係の解消だって有り得る。

 ちゃんと妊娠できる体の女性と再婚する可能性だってあるわけで……。

 考えれば考えるほど気持ちがどんより沈んできてしまい、無意識のうちにため息が漏れる。

 こんなこと考えても落ち込むだけなのに、なにか考え始めるとマイナスな思考に傾いていってしまう。

 好きになればなるほど苦しくて、よくないことばかり考える。

 いっそのこと、自分の気持ちをすべて晃汰さんに告白してしまえばこの複雑な気持ちは落ち着くのだろうか……?

 考え事をしているとあっという間に目的駅に到着し、開いた扉から降車する。

 こんな気持ちのまま仕事をするわけにはいかない。

 駅を出て病院に向かって歩き出し、その途中で気分を切り替えようとカフェに立ち寄る。テイクアウトでフレーバーティーを買い求め、再び病院に向かって歩き出した。

 なにげなく泳がせた視線の先、その光景に目を疑う。

 えっ……?

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