溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 気がつけば、リビングのソファセットの下に敷いているアイボリーカラーの絨毯の一点をぼうっと見つめていた。

 床に座り込んだまま、どれくらい時間が経ったかわからない。

 それどころか、どうやって帰宅したかも断片的にしか覚えてない。

 よく無事に帰ってきたなと、他人事のように思う自分はどこか遠くにいるような感覚だ。

 頭の中では、さっき見た光景が何度も繰り返して再生されている。

 タクシーから降りてきたふたりが、連れ立って産婦人科の扉の向こうに消えていく。

 その衝撃的な光景が目の裏に貼り付いて離れない。

 産婦人科……つまり、五十嵐さんが受診したことになる。

 なぜ、五十嵐さんが晃汰さんと産婦人科に入っていったのか……。

 考えないようにしていたその疑問をとうとう考え始めてしまい、その瞬間、視界がぶわっと涙で溢れた。

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