溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
今日、散々考えていたよからぬこと。それが現実になって私の身に降りかかってきている。
結婚した私が、一向に妊娠の兆しがないから、別れる方向で話が進んでいるのかもしれない。
そして、次に一緒になる予定なのがきっと五十嵐さんなのだ。
そんな考えが頭に浮かんで、以前、彼女に言われた言葉が蘇る。
『あなたより、同じ医師の私の方が彼に相応しいわ』
その言葉を裏付けるのが、今日のあの衝撃の光景だ。
五十嵐さんが晃汰さんの子を妊娠しているのであれば、離婚届を出されるのも近いうちに……。
ぼろぼろととうとう涙が止まらず、両手で目元を覆う。
あまりのショックと、到底受け入れられない現実を目の当たりにして、初めは涙すら出てこなかった。
でも、一度流れ始めた涙は止まることなく顔中を濡らし、顎からぽたぽたとスカートの上に落ちていく。
「うっ、っ……うぅ」
ひとりきりのリビングに、私の嗚咽が響く。