溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 別れを切り出された時、私はどんな顔をして受け入れればいいのだろう。

 きっと、間違いなく涙が溢れて、晃汰さんの前で号泣してしまうに違いない。

 泣かれたって、晃汰さんは困るだけで、迷惑でしかないのに。

 今、思う存分泣いて、気が済むまで泣いて、そうすれば、いざという時に我慢できるだろうか。

 でも、晃汰さんを目の前にしたら、平然と『わかりました』なんて間違いなく言えない。

 きっと困惑させてしまうんだろうな……。


「千尋⁉」


 勢いよくリビングのドアが開き、静寂が破られる。

 突然のことに驚いて顔を上げると、そこに見えた晃汰さんの姿に大きく心臓が打ち鳴った。


「千尋、どうしたんだ」


 真剣な面持ちであっという間に私の座り込む場所までやってきた晃汰さんは、腰を落とし私の肩を掴む。

 至近距離で目を合わされ、その真っすぐな目に息が止まりかけた。


「いつまで経っても出勤してこないし、連絡は一向につかなくて、なにかあったのかと病院を飛び出してきた」


 そう言った晃汰さんは確かにスクラブに白衣の姿だ。

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