溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「でも、ひとつ許せないことがある」
「え……?」
「俺が、妻以外、千尋以外を抱いて妊娠させていたかもなんて妄想したこと」
「あ……それは、ごめんなさい」
いくら思い込みで勘違いしたとはいえ、確かにとんでもない妄想だ。
私のことだけを想ってくれていた晃汰さんからすれば、怒っても仕方ない。
「おしおき案件だな、これは。千尋の体調がよくなったらだが」
ふざけた口調でそう言った晃汰さんはふっと笑い、「体はどうなんだ」とすぐに真面目なトーンに戻る。
「はい。お陰様でよくなりました。ありがとうございました」
「それならいいが、あまり無理しなくていい。今日だって、出てこようとしなくても大丈夫だったんだ」
「そうですけど……でも、本当に大丈夫だったので。それに、今日休んでいたら、晃汰さんの気持ちをこんな風に聞く機会はこなかったですし」
回り回って、誤解から和解以上のものを得られた。
この一件がなければ、こんな風にお互いの気持ちを言い合うことなんてなかっただろう。