溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


「まぁ、確かに、そうかもな」


 ふたりしてクスッと笑い合い、またギュッと抱きしめ合う。

 晃汰さんはそれから、今日の五十嵐さんとの一件の詳細を私に話してくれた。

 晃汰さんがお昼を食べに外出した先で、仕事の関係で来ていたという五十嵐さんと駅前でバッタリ会ったらしい。

 立ち話をしている最中、急に具合が悪くなり、そこで実は妊娠しているという話をされたという。

 その流れで居合わせた晃汰さんがタクシーを拾い、彼女をかかりつけの病院まで連れていったということだった。私が目撃したのはちょうどその場面だったのだ。

 五十嵐さんには結婚間近の婚約者がいるということも教えてくれた。


「五十嵐が千尋に謝っておいてほしいと言っていた」

「え……?」

「なにを言ったかは知らないが、千尋に厭味を言ってしまったと」


 そう言われて、あの時のことを思い出す。


「過去に俺が交際を断ったのを根に持っていたと言っていた。自分と真逆の性格で愛されている千尋がかわいかったから、嫉妬からちょっと意地悪なことを言ってしまったと聞いた」

「そんな話を……」

「傷付くようなことを言われたのか?」


 あの時はうじうじとしばらく悩んでしまった。

 けれど、今となってはもうどうでもいい。晃汰さんの気持ちを知ることができたから、なにも恐れるものはない。


「大丈夫ですよ」

 にこりと笑ってそう答えた。

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