溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
約束の店舗に近付くと、店舗前に設置してあるベンチに千尋はひとりかけていた。
しかし、その目の前に立つ姿に不意に足が止まる。
あの男は……そう思い出したちょうどその時、男の手が千尋の腕を掴んだ。
それを確認した次の瞬間には、男の背後に迫り、肩を掴んで勢いよく千尋から引き離していた。
男はよろけ、地面に尻もちをつく。俺の顔を確認するなり驚いたように目を見開いたのは、間違いなく以前千尋と縁談を進めようとしていたあの男だった。
なぜまた? そんな怒りを抑えて口を開く。
「忠告したはずだ。金輪際、彼女の前に姿を現さないようにと」
傍からはわからなくても、千尋は妊娠中なのだ。
ただでさえ許せないものが、より一層怒りのボルテージを上げる。
「でも、どうやら話してわかってもらえないようだから、それなりの処置をとらせてもらうことにする」
その言葉に動揺したのか、男は慌てて立ち上がりその場をかけていく。
逃げる後ろ姿を見送り、すぐに千尋の両手をとった。