溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「でも、ごめんなさい。あと、一時間を切ったからコースは出せないと言われてしまって……。お席が二時間の予約だと聞いたので、キャンセルして退店しちゃいました」
事情を話してくれた千尋は、今度はどこか悲しげな表情を見せている。
「せっかく晃汰さんが予約してくれたのに。ごめんなさい、私の勝手な判断で」
肩を落とした千尋を優しく抱きしめ、腕を解いて手を繋いだ。
「それはまったく構わない。むしろそんな気まで使わせて申し訳なかった」
「いえ、いいんです。ただ、素敵なレストランだったので残念だなって」
「それはまた来ればいい」
これからどうしようかと思案しながらゆっくりと歩き出す。
千尋がギュッと繋ぐ手に力を込めてきて、しっかりと握り返した。
「なんか、こうやってちゃんとした格好で晃汰さんと外を歩くの、久しぶりで嬉しいです。少し、ぶらぶらしていきませんか?」
「体は大丈夫か? 歩きすぎるのも心配だから」
「大丈夫ですよ。さっきまでずっと座ってましたから」
楽しそうな顔を見せられると、希望はなんでも叶えてやりたくなる。もっとその顔を見たいから。