溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「わかった。少し散歩して、なにか食べて帰ろう」
「はい! 嬉しい」
それから、すぐに車に戻れる範囲で夜の赤レンガ倉庫を散歩する。オレンジ色にライトアップされたロマンチックな景色に、千尋が「綺麗……」と呟いた。
「来月あたりからクリスマスイルミネーションになるんですよね?」
「ああ、確か毎年そのあたりだったよな」
「晃汰さんと一緒に来たいな」
婚姻関係を結んだ当初なら、こんな風に甘えるような言葉を千尋が発することはまずなかった。
仕事の延長線上のような関係だったから、来たいと思ったとしても希望すら口にしなかっただろう。
だから今こうして素直な気持ちを伝えてきてくれることがものすごく嬉しいし、愛しくてたまらない。
以前感じていた見えない壁はもう完全に壊れてなくなった。
「その頃には安定期にも入ってるし、必ず来よう。今日楽しめなかったレストランも、その時にリベンジで」
「それいいですね! わぁ、今からすごく楽しみ」
通りがかったイタリアンの創作レストランがふたりして気になり、夕食を食べていこうということになる。
入店してメニューを眺めた千尋は「うーん……」と唸った。