溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「妊婦じゃなかったら、このカルパッチョとかいきたいんですけど……」
「生はな、避けた方がいいから仕方ないな」
「はい。今日はがっつりいけそうなので、お肉を食べます」
「お、いいな。食べられる時にちゃんと食べておいた方がいい」
千尋は珍しくステーキメニューを選び、俺も別のグリルメニューを選ぶ。
通りかかったスタッフを呼び止め注文をする。
「こちら、焼き加減がレア、ミディアム、ウェルダンとお選びいただけますが」
千尋のステーキメニューについて訊かれて、確認せずに「生がないように、しっかり目にお願いできれば」と答える。
スタッフが立ち去っていくと、千尋は我慢していたのを吹き出すようにして笑った。
知らないうちに、なにか笑われるようなことをしでかしたのかと動揺する。
「どうした」
「あ、いえ。晃汰さんが、焼き加減についてしっかりオーダーしていたので、なんだかおかしくなってしまって」
そう言ってまた思い出すようにクスクス笑う。