溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「それは当たり前だろう。生はよくない」
「そうですね、ありがとうございます」
千尋の妊娠がわかって、天にも昇る思いだった。
もともとこの結婚の始まりは、お互いの条件が合致したから。
その条件の一致と、仕事上の付き合いが長いから一緒になるという、今思い返せば有り得ない結婚だった。
母親の件で弱る彼女に惹かれ、それをきっかけに彼女を妻としてめとりたいと強く思った。でも、それは俺の一方的な思いで、千尋はよく拒否しなかったなと今になって思う。
そんな始まりではあったけれど、いつしか子ども云々よりも千尋本人と過ごす時間が大切でかけがえのないものになっていた。
子どもをつくろうという思いより、ただ彼女が欲しいと思って肌を重ねていたし、その上で授かればそれ以上のことはないという思いだった。
だからもし、万が一俺たち夫婦の間に子どもがやってきてくれなくても、生涯彼女を幸せにしたい思いはまったく変わらない。
「なんか……そうやっていつも気遣ってもらえるのが嬉しくて」
どこか照れたように言い、はにかんでみせる。
ここが店でなければすぐにでも抱きしめて口づけているけれど、その衝動をぐっと押し込めた。
「愛する奥さんなんだから、当たり前だろう?」
そう言ってみると、千尋は頬をほんのり染めてにこりと微笑んだ。