溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
いよいよ到着してしまったと、実家を目の前にして心臓が忙しなく音を立てていく。
生まれ育ったこの場所に来て、となりにいるのはなぜか水瀬院長。
実家に男性と訪れること自体初めてなのに、その相手が水瀬院長だということが意味不明すぎる。
私の人生に交わってくる相手だなんて、一ミリたりとも考えたことがなかった。
駐車をしエンジンを切った車から降りた水瀬院長が、私の乗る助手席側に回ってくる。
となりにうちの車が駐車されていてドアの開閉が思いっきりできず、水瀬院長は気をつけてドアを開けてくれる。
「すみません、窮屈な駐車場で」
「いや、問題ない。降りられるか」
「はい、ありがとうございます」
そそくさと降車し、駐車場から表に出る。
小さな門に先に向かい、それを開いて「どうぞ」と後に続いてきた水瀬院長を中に促した。
玄関扉を前に、となりに立つ水瀬院長に気づかれないよう深呼吸をする。
自ら玄関の鍵を開け、ドアを開けて中に向かって「ただいま」と声をかけた。
「お帰りなさい」
すぐに玄関奥のリビングの扉が開き、母親が小走りで玄関に出てくる。
水瀬院長を目にするなり、「こんにちは、お世話になっております!」と挨拶をした。