溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「俺は『榊』とかでステーキとか食べたいんだよな」
構わないと言いつつも、やはりご不満の様子。榊とは、彼の贔屓にしている銀座の高級店だ。
「申し訳ございません」と口にしながらも、心の中で小さく息をついた。
女性が振り返る容姿を持ち、肩書きは心臓血管外科医にして総合病院の院長。
完璧なスペックの彼……だが、私に対しては少し癖がある。
容赦なくわがままを言うし、辛辣な言葉が飛び出すことも多々。
長く付いているからこその甘えだとはわかっているものの、心の中でつい小さなため息をついてしまうことがある。今のように。
私──小野寺千尋は、ここ、水瀬横浜総合病院で医療秘書として勤めている。