溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「こんにちは。すみません、突然伺ってしまい」
「いえ! その節は大変お世話になりました。どうぞ、お上がりになってください」
玄関先にはすでに来客用のスリッパが用意されている。事前に電話連絡していて正解だったようだ。
「お邪魔します」
玄関を上がる水瀬院長を目に、奥から父親が顔を出したのが目に入る。
タイミングよく今日はたまたま平日の休みだったのだろうか、そそくさと出てきて「いつもお世話になってます!」と水瀬院長を出迎えた。
「こちらこそ、いつも大変お世話になっております。今日は突然申し訳ない。つまらないものですが」
「ああ、院長先生、気を遣わないでください。母さん、頂き物を」
手土産を渡された父親は普段は見せない落ち着かない挙動でキッチンに入った母親を追いかける。
「院長、奥へどうぞ」
両親も相当動揺しているのがその様子から伝わり、ふたりに代わって水瀬院長をリビングのソファへと案内した。
玄関を入って母親に出迎えられてから、心拍の拍動がずっと主張を続けて落ち着かない。息も若干苦しい気がする。
そんな私とは対照的に、となりにいる水瀬院長は至って普通で特に緊張している様子も見受けられない。
普段通り凛とした姿は変わらず、堂々としている。