溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「院長先生、すみません、あんな高級なものをいただいてしまって」
私たちの元に戻ってきた母親は、水瀬先生と私の前に煎茶を出していく。
父親が対面するソファにかけ、すぐに母親もそのとなりに腰を落ち着かせた。
いよいよ両親と水瀬院長、そして私が対面する形となり、思わず息を呑む。
誰から話を切り出すのかと思っているうち、水瀬院長が「本日は突然押しかけて申し訳ありません」と口を開いた。
その言葉に、両親は「いえいえ!」と声を揃える。
「何か、千尋が問題でも……」
院長が直々に家までやってきて両親に会うというシチュエーション。
両親的には、私がなにか大罪を犯してしまったのではないかと思うのが普通の思考だ。
「いえ。本日はそのようなことで伺ったわけではありません。彼女にそういったミスなど有り得ないです」
きっぱりそう言われた両親は一瞬顔を見合わせる。
「あの……では、どういったご用件で今日は……」
「突然のご訪問、驚かせてしまいましたね。今日は、お願いがあり伺いました」
横で水瀬院長が口にした言葉を聞きながら、自分の視線が忙しなく動く。
母親を見たり、父親を見たり、だけど目が合うと困りそうで、目の前のお茶の置かれたテーブルに視線を落としたり。眼の動きだけでも落ち着きがない。
本当に、本当に言うの……?
「お嬢さんを、千尋さんを私にいただけないでしょうか」