溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「院長、本日十八時からの榊での会食予定ですが、先方の是枝先生のご都合で後日に変更となりました」
「そうか。どうかされたのか」
「はい。奥様が急病だそうです。また改めて会食の予定は立てることになりました」
スマートフォンを再びタップし、榊の電話番号を表示させる。
「そういうことですので、本日はキャンセルの連絡を入れておきます」
「ちょっと待った」
電話をかけようとスマートフォンを握る手を、近付いてきた水瀬院長に掴まれる。
突然のことに驚き、びくりと肩を揺らしてしまった。
「どうか、されましたか……？」
「キャンセルは必要ない」
「え？」
「今から食事に行けばいいだけの話だ」
そう言われて小首を傾げる。
「えと……わかりました。では、人数変更の連絡を入れさせていただきます」
「人数の変更？ ふたりで予約しているのになにを変更するというんだ」
「それは──」
「是枝先生が来られなくなった代わりに、小野寺が食事をすればいい」
「わ、私がですか？」
