溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
4、彼女を繋ぎとめたくて Side Kouta


 振り返らずにリビングから飛び出して行った足音が消えて、気が抜けるようにふうと小さく息をついた。

 あんな、逃げるように帰らなくてもよくないか?

 そそくさと立ち去っていった彼女の姿を思い返し、今度はクスッと笑みがこぼれる。

 少し、攻めすぎたか……。

 普段の姿勢を崩してやろうと軽い気持ちでキスしてみたけれど、予想とは違う反応が返ってきて内心動揺した。

 毅然とした態度で、なにをするのかと怒るとばかり思っていた。

 しかし、実際は顔を赤らめ逃げるように帰っていってしまったのだ。

 彼女と仕事上、行動を共にするようになって早三年。

 あんな顔を見たのは初めてだった。

 ヒールのある靴を履いても俺の頭一個分小さい彼女は、童顔なせいもあり幼く見えるが、いつもピンと背筋を伸ばし、堂々としている姿が逞しい。

 自分の仕事は確実にこなし、周囲への気遣いも忘れない彼女は、秘書という仕事が天職なのだろう。

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