溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
そんな彼女が辞めると言い出した時、内心狼狽した。
事情を聞けば、結婚を視野に入れた退職を希望していると知り、気が付くとそれなら俺と結婚すればいいと口にしていた。
引き留めるとはいえ、自分の発言にはさすがにゾッとした。
こんなことを言い出すなんてドン引きされたはず。
しかし、引くに引けず、動揺する彼女にたたみかけた。
なんとか彼女の辞職を思い留まらせたい。
そう思ううちに、本当に彼女と婚姻関係を結んだらと真剣に考え始めていた。
そこまで気持ちが動かされたのは、これまで見たことのなかった彼女の弱い部分を目にしたからかもしれない。
いつも凛としてぶれない、何事にも動じない彼女が、母親が倒れた時に見せた姿は意外なものだった。
弱々しくて、今にも壊れてしまいそうな脆さは、激しく心を揺さぶり庇護欲を掻き立てた。
自分が彼女を守りたい。ただ、そう強く思った。