溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る

　思い立てば次の行動は早く、父に彼女と結婚したい旨を伝えた。

　近年、父からは跡継ぎの話をことあるごとにされていた。後継者を強く求めている話は耳が痛いほどだったくらいだ。

　身を固めて欲しいと願っていた両親に反対する理由はなく、むしろ彼女を目にかけていた父は話を最後まで聞かず賛成した。

『見合いなど勧めていないで、小野寺くんのような相応しい女性がそばにいたのになんで気付かなかったんだ』と言っていたくらいだった。

　父からも頼まれる形になった彼女に断る術はなく、婚姻関係を結ぶ流れに無事漕ぎつけた。

　父親の会社が経営難のために資金援助をしてもらいたい彼女と、身を固め、後継者を求められている俺。

　互いに欲しいものを手に入れるための婚姻関係。

　そんな政略結婚という形で始まった関係だけど、彼女の気持ちは手に入れたい。

　これからは夫婦として、プライベートな時間も一緒に過ごしていく。その中で彼女への想いを伝えていきたいと思っている。

　ひとりきりになったマンションの一室で、これからここで始まる新婚生活をぼんやりと思い描いていた。