溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 十三時半過ぎ。私はひとり、院長室のとなりに設けられた私専用の控え室で少し遅めの昼食を取っていた。

 今さっき、十三時前に出発する水瀬先生を見送ったばかりだ。

 二畳ほどの部屋は、私が出勤してきて身支度を整えたり、こうして昼食を取ったり、私だけのプライベート空間のように使わせてもらっている。

 水瀬院長が不在で同行しない時は、ここで事務作業なんかもこなしている。

 小さな部屋の中には、私の作ってきたオムライス弁当の香りが微かに漂う。

 デスクの向こう側の小さな窓を開けると、すうっと冷たい風が部屋に入り込んだ。

 一月半ばの冬本番の寒さは、少し窓を開けただけでもすぐに部屋の中の空気を下げていく。空気が入れ替わると、すぐに窓を閉め切った。

 昨日の晩に炊飯器で炊いて作ったチキンライス。その残りを詰め、玉子を焼いて載せた簡単オムライス。

 それにブロッコリーとミニトマト、ヤングコーンとニンジンを添えた簡単お弁当が今日のお昼だ。

 冷えても大きく切った鶏肉は食べごたえがあって美味しい。

 ヤングコーンにフォークを刺したところで、デスクの傍らに置いておいたスマートフォンがカタカタと振動し始めた。

< 9 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop