私だけを濡らす雨/ハードバージョン
回想①



ケンは一匹狼で、男らしくて度胸があったわね

不愛想ではあったけど

この時分の私…、そろそろひっこもりに入るつもりだったから、なんかタイミングはよかった感があったのよね~

ということで、私は”着手”した


***


それで…

ケンが丸坊主姿になって学校に現れたのは、それから1週間後だったわ

実際にバリカン入れられたのはその二日目前だけど

要は学校を1日休んだ訳

そりゃあねえ~~

コワ面のオトナの男何人もで監禁されて、手を下されちゃったんじゃ、無理ねーわってね

1日ショックで寝込んでもさ、無理ないよ

そんで、さっそく私んとこへきたわ、ケンのヤツ


***


「…えらい目に遭った。まさか、”ああいう”出方をされるとはな…」

「親とかには言わなかったの?」

まずはこの点を確認よね

「オレ、両親はいないんだ。で、腹違いのアニキが保護者なんだけど、何も話してない。このアタマは自分でってな。まあ、向こうはああ、そうかで終わってる」

ケンはきっぱりと言いのけてた

***

「一応理由聞いていい?家の人にチクったら当然学校に知られるんで、そのことでお姉ちゃんにまたお仕置きされるの、コワかったから?」

「お前はどう思うんだ?」

「フツーはそうでしょ。私らまだ中学生の子供だし」

「じゃあ、オレはお前の見立てるフツーな中坊じゃなさそうだな、ハハ…」

ケンはそう言いながら、私の前で初めて笑ってよ

***

「…これはオレの流儀だよ。ナルオたちの忠告を突っぱねたからには、自己責任ってこと。それだけさ。しかし、ガタイのデカいそれ系3人に拉致られて頭刈られてる時は恐怖心でブルブルだったわ。その点じゃあ、そこらのフツーな奴らと一緒だよな(苦笑)」

”ううん、ちがうよ、ケンは…”

私は正直にそう思ったわ

でも、この時は言葉に出さなかった

「私のお姉ちゃんさ、短期間のヤミ金業で財を成した凄腕の取り立て屋だったからさ、あの手の仲間連中は使い慣れてるのよ」

「ふう…、そういうことか。オレはてっきり姉さんってのが直接現れるかと思っていたわ」

「あのね…、せっかくだから言っとくけど、お姉ちゃん直だったらもっと恐ろしい目に遭っていたわよ。このこと、よく覚えておいて」

「…」

結局、ケンは私に”調停”の申し出を入れてきたわ

まあ、それしか彼にはチョイスの余地ないもん




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