私だけを濡らす雨/ハードバージョン
蛮行



それは瞬時の出来事であった

清々しい晴れた朝には最も不似合いな赤くてどす黒い血…

蛮行の舞台は霧澄川河川敷、土手の芝生上であった


***


”キャイーン…‼”

甲高いその鳴き声は、愛犬のロックスに間違いはなかった

白い毛並みが鮮やかなロックスは、飼い主である桜木の元に戻った時、既に深紅のマントを煽っていた

「ロックス、おい、しっかりしろ!ロックスー⁉」

桜木はロックスを抱きかかえ、何度もそう連呼した

だが、ロックスはぐったりとし、目はどろんとしている

”誰だ、ロックスにこんな酷いことをしたのは‼”

そうであった…!

ロックスはわき腹を明らかに鋭利な刃物で刺されていたのだ…

心の中でそう叫んだ直後…

ソイツは土手の上に現れた

ソイツは20代後半くらいの細身の女だった…

これが、例の女…、郡氷子とのファーストコンタクトであった




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