私だけを濡らす雨/ハードバージョン
妹の悪だくみ、さらに③



ケンとはその日のうちに会った

家からはちょっと離れた図書館で

「あのな、オレもお前にケータイかけようと思っていたんだ」

「えっ?そうなんだ…。でもなんで?」

ケンは私が”用件”を切り出す前に話し出してきたの

とは言え、私、咄嗟にそうは聞いたけど、大体は予期できたんだよ

それはとっても恐ろしいイメージだった

トーゼン…

***

だけど、ケンの話は、私の予期以上のものだったの

もろ戦慄したって

それこそ体が固まっちゃったわ

「…数日前、お前の姉さんと駅で会ってさ。向こうから声をかけてきたよ。もっとも、オレの方は姉さんの顔知らないし、全く気付かなかったからな」

「…」

「…一応、何でオレだってわかったのか、聞いたんだ。そしたら、人に請け負わせてもターゲットは必ず”現物”を事後確認するんだそうだ。…まあ、それで氷子さんの話なんだけどさ…」

私は聞くのが恐かったよ

ものすごく…


***


「…え?じゃあ、そっちのお兄さんと裁判ってことを…」

「ああ、桜木って名字で兄弟だってこと察しがついてたようだわ。オレもさ、ロックスが殺された件は当然承知してたし、訴訟の件もな。だから、ああ、この人がそうなんだってとこだった。ところがよう、そのあと…」

ここでケンの口から出た言葉には衝撃を受けたけど、どこか冷静に受け止められた面はあったかな

不思議と…


***


「…ケン、私と会ったこと、仮に姉がまた接触してきても絶対言わない方がいいわ。危険だから、変に刺激するとさ」

「わかった。絶対言わねえよ」

「それと、お兄さんにも。かなりナーバスになってるようなのよ、何しろ裁判相手がとんでもないイカレ女だってことで」

「要はお前のこと、何にしろ伏せときゃいいんだろ?」

「そう。私もそれを含んで対応するから」

「了解だ。しかしまあ…、ずいぶんとヘンテコな関係になって来たな、オレ達兄弟二組…」

「そうね。世にも奇妙ななんとかだよね。年の離れ方もほとんど一緒ってのもね」

ここでさすがに、ケンは大笑いしてた


***


ここでのポイントは…

お姉ちゃん、私が作ったケンとの”過去”を承知してるかもってことだ

よし、とにかくこれでケンは押さえたわ

次はお兄さんか…


***


桜木兄とは家に戻る途中、ケータイでやりとりした

「…そうか…。かわいそうに、そんなクモの巣ひとつで…。それで、ケガとかはないのかい?」

「うん、大丈夫です。年中だから、受けも要領得てるんで。…それより、姉はつとに気がたってきてるようなので、気を付けてください。桜木さんとの裁判のこと口にして、私の様子であなたとのこと感づいてるかもしれないし。あの女は勘が鋭いんです」

「あ…、ああ、そうだね。気を付けるよ、なにしろ…」

おじさん、またビビッてる様子だったわ

とりあえず、ケンのお兄さんの方も念押し完了で、いざ実行の際への下地は作れた

こうなったら、早く実行のプランを固めなきゃ!


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