私だけを濡らす雨/ハードバージョン
静寂の中に狂気アリ




桜木正樹に手を引かれ?、彼の家に着いてからはピリピリな静寂の中、郡ツグミは同級生♂の異母兄であり、実質の保護者であるこのオヤジと非日常な睨めっこの時にあった

”おじさん…、貧乏ゆすり、右足だけなのね。ずっとだわ…”

”それ、ケンへのいら立ち?それとも、心配で心配でしょうがない!アイツは母親違いとは言え、ずっとここまで一緒に暮らしてきた弟なんだ!何としても無事で帰ってこい!…、んな感じで居ても立っても居られないってこと…?どっちなの、おじさん…”

いつも、自分だけに降り注いで止まない冷たいに雨に凍えている少女は、ケンの安否が懸念で頭がいっぱいながらも、興味本位な妖しい視線をケンの兄へ浴びせていた

ソレって…?


***


桜木の家は急行は止まらないながらも、私鉄の駅から徒歩で15分ちょっとという住宅街の一角にあった

緩やかでまっすぐな坂を上りきって、そこから急坂を下る途中の敷地約50坪上に佇む白いサイディングが映える洋風の2階建てだった

築年数はかなり経過しているが、桜木正樹が死んだ父親からの相続で取得したれっきとし持ち家であった

母親の違う年の離れた弟ケンとは彼が小学4年のころから、この家で二人暮らしで、実際そこそこ仲良く暮らしていた

それはずっと…

もっともその二者関係は、ごくナチュラルな二人三脚ライフのベースを相互許容しあって、ドライな絆を根っこにした割切り感最優先のカンケーとも言えた

この兄弟の、このまだら模様な信頼…、というか!

微妙なシンパシーが成立した?、異母兄弟の落ち着き具合は、郡ツグミをある意味震撼させた

つまり~!

ツグミは”かの日”…、桜木ケンが、おお~~ってノリであの恐ろしい我が”実の!”ねえちゃんに、何気に冷めたケンカ腰で勇敢な無防備ぶりを貫徹させたオトコの首尾をがっつり見届けるに至り、ガーンときたのだ

芯の底から、金属バット殴打レベルでガーンと…


***


で…、”あのオンナ”のせいでいつも冷たい雨にずぶ濡れでカワイソー&気の毒少女なワタシは、このタメ年♂が、自分と一緒の親(ダブルで!)ナシの兄弟二人人生をうまくやってるって事実・実情が、瞳孔フルオープンへと陥ると、ケンちゃんはもっともっとの存在となった

これが、郡ツグミの偽らざるセルフ・コンフェルってことだった

で、ツグミは、我がねーちゃんの指示で丸坊主刈りの刑を受けたが、そこそこ堂々で登校したケンにへは、さり気ながら貪るように身の上を探った

”なんでよ!うそでしょ~~❓❓なんで、そんなに半分他人な兄さんとうまくやっていけるのよ!クソッ!”

ツグミはどこか予定調和を孕みながらも、痛痒い苛立ちの延長で、そんなケンに性的うずうず感も催すのだった

かくて、そんな同じ中2のコドモをこうまですっぽり収めてる兄ちゃんって…

”もしかして~~、すんごい王子さま~~❓うふふ、会いたいわ~。一体、どんなステキ男なのかしらん❣”

結論、その時の郡ツグミはこんな胸きゅんで一段落させた


***



だが!

だが~~、そんな薄幸少女?の、胸キュンなイマジネーションは数か月後、とんでもない勘違いを己に悟らせる

なんと!

一体どんなヒトなのよってその人が、お姉ちゃんの裁判相手となって私の前に現れるなんて!

わー、ださー

しっかり、王子様じゃないじゃん!完璧に‼

ということになった…

しかしながら、現実の展開は宿縁の実のねーちゃんと対決って土俵に及んだ今、カノジョはにっくきマッドな姉抜きで、このダサ兄へは、半分しか血がつながっていない弟へのホントな覚悟を試したくてしょうがなかった

午後7時40分…

桜木邸のリビングで、ケンの身を共に慮るツグミは、桜木正樹をこんな状況ながら、舐めるように観察していた

ツグミは意外ながら、短時間で我が結論を得た

”この人…、マジでホンキでケンを心配してるじゃん!ステキ~~。こんなカゾク、欲しいよー”

かくして、桜木ケンがおそらくは阿鼻叫喚の生きジゴク真っただ中であろうことは想像できても、ツグミは目の前の中年男が我がアタマの中に巡らせることを拒否しなかった

そして、この後、郡ツグミは桜木正樹へ、さらなる驚愕な踏み絵を強い迫り、そのホンキを計ることになるだが…



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