私だけを濡らす雨/ハードバージョン

第11章/止んだ雨、病んだ心

確信犯




「もうそろそろ、警察、来てもよさそうだが…」

この時のツグミにとって、氷子ねーちゃんと警察のどっちが先にココへ現れるのか…。
これが、彼女の焦点であり、最も気がかり&興味津々なトコロではあった。

”私はどっちでもウェルカムよ。土砂降りにずぶ濡れな私の命は警察がいなくても、このおじさんが守ってくれる。命がけで…。私、もう詰めちゃったし、この人は。でも…、今一、頼り甲斐がないからなあ…。やっぱ、程よく警察には駆け付けてもらわないと…”

郡ツグミは冷静に、今の現状とこれから起こり得るであろう局面を冷静にかみ砕いていた。


***


「アハハ…、トイレのあの写真か…。アレ、オレとケンの心が通った出来事の記念ってことでね…。まあ、多分ケンも一緒だと思うけど、お互い母親は違うが兄弟ってことでやっぱな、頑張らなくちゃなって気持ちというか、誓いを込めたって証しでもあるんだよな。はは…」

「ああ、そう…」

ツグミはなぜか、それ以上の愛想は出せなかった。

「…まあ、今紅茶でも入れるよ」

桜木はそう言って、ソファから立ち上がり、キッチンに入った。

と、その時だった…‼

”ガシャーン…!!”

ものすごい音をたて、淡いグリーンのカーテンで覆われたリビングの窓から、ロープでぐるぐる巻きにされた人間の体が飛び込んできたのだ!

”ケンだ!!”

室内の二人はすぐに確信できた。
おそらくはどういう状況かも…!

”ゴロゴロゴロ…”

全身血まみれで転がされたケンは、ツグミの足元で静止した。
ツグミの眼下には仰向けの同級生が無残な姿を晒している!

「キャア~~!!」

「わあ、わあー!ケンー!!」

ツグミは瞬時に立ちあがると、両の足を足踏み状態のまま口を手で塞ぎ絶叫、それにキッチンから駆け付けた桜木の野太い声が合わさった。
静かだった桜木家のリビングは、一瞬で修羅の場と化すのだった。




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