私だけを濡らす雨/ハードバージョン
方針転換
辻合は典型的な合理主義者で、依頼者には良し悪し別として、常にドライ、ビジネスライクな対応を貫いていた
そんなカタブツ弁護士も方針の転換に振れざるを得なかったのには、訴訟相手の郡氷子という若いオンナの見え隠れする不穏な正体…
その惧れという側面が大きかった
なにしろ、依頼人の桜木からは郡氷子に対する恐怖感がドシリと伝わってきたのだ
「…被告の家族はツグミという中2の妹一人で、今は二人で暮らしているようですな」
「ええ、そのツグミという名の妹は、引きこもりで今は学校には行っていないらしいんですが…、実は僕の腹違いの弟、ケンとは同じ中学の同級生だったんです」
「ほう…、それは偶然ですな」
弁護士の目は一瞬きらりと光った…
「しかも、その…、二人にはある接点があったようで…」
***
「…そう言うことですか。それならば、”そっち”の方は私がまずきっかけを作りましょう」
「はあ…」
「要は、私が被告の妹さんに接触します。そこで、彼女の様子を窺うというか探りを入れます。その上で、可能ならば、あなたが直にあって話をする段取りをつけます」
「その際、先生は弁護士って立場を告げるんですか、その妹に?」
「そのつもりです。まあ、実際に妹さんに会っての状況次第ですがね」
「でも、先生が…、いや、訴訟相手の弁護人がその妹が姉にそのまんま話してしまったらまずいですよ!」
「逃げは打っておきますから、あなたは心配戦でよろしい。ここは郡という女があなたの愛犬を殺傷した動機があるかどうか…。そこのところを、あなたは知りたいんでしょう?」
「まあ、そうですが…」
「ならば、ここは私にお任せいただきたい。…桜木さん、これは直感だが、そんなイカレた女の妹なら一見すれば同類か否かは明瞭だ。仮に私の目ではっきり後者だと確信できれば、この場合は姉への悪感情を抱いている可能性が高い。そうなれば、話の持って生き方次第では彼女をこちらの”協力者”び引き込むことができる」
「なるほど…」
辻合の方針に、桜木正樹は依頼者として同意した
辻合は典型的な合理主義者で、依頼者には良し悪し別として、常にドライ、ビジネスライクな対応を貫いていた
そんなカタブツ弁護士も方針の転換に振れざるを得なかったのには、訴訟相手の郡氷子という若いオンナの見え隠れする不穏な正体…
その惧れという側面が大きかった
なにしろ、依頼人の桜木からは郡氷子に対する恐怖感がドシリと伝わってきたのだ
「…被告の家族はツグミという中2の妹一人で、今は二人で暮らしているようですな」
「ええ、そのツグミという名の妹は、引きこもりで今は学校には行っていないらしいんですが…、実は僕の腹違いの弟、ケンとは同じ中学の同級生だったんです」
「ほう…、それは偶然ですな」
弁護士の目は一瞬きらりと光った…
「しかも、その…、二人にはある接点があったようで…」
***
「…そう言うことですか。それならば、”そっち”の方は私がまずきっかけを作りましょう」
「はあ…」
「要は、私が被告の妹さんに接触します。そこで、彼女の様子を窺うというか探りを入れます。その上で、可能ならば、あなたが直にあって話をする段取りをつけます」
「その際、先生は弁護士って立場を告げるんですか、その妹に?」
「そのつもりです。まあ、実際に妹さんに会っての状況次第ですがね」
「でも、先生が…、いや、訴訟相手の弁護人がその妹が姉にそのまんま話してしまったらまずいですよ!」
「逃げは打っておきますから、あなたは心配戦でよろしい。ここは郡という女があなたの愛犬を殺傷した動機があるかどうか…。そこのところを、あなたは知りたいんでしょう?」
「まあ、そうですが…」
「ならば、ここは私にお任せいただきたい。…桜木さん、これは直感だが、そんなイカレた女の妹なら一見すれば同類か否かは明瞭だ。仮に私の目ではっきり後者だと確信できれば、この場合は姉への悪感情を抱いている可能性が高い。そうなれば、話の持って生き方次第では彼女をこちらの”協力者”び引き込むことができる」
「なるほど…」
辻合の方針に、桜木正樹は依頼者として同意した