花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
「晴翔、夏休みの宿題終わってるよな?このページだけ写させて。」
宿題に出された数学のワークブックを修治に渡した。修治が他人の宿題を写すなんて珍しかった。
「あぁ、構わない。何かあったのか?」
机のパソコンに体を向きなおし、言葉だけ投げかけて聞いてみる。俺がこんな質問をするのも珍しかったので修治は驚いた様な顔をしていたと思う。
「ちょっと集中できなくてな…。恋煩いだ。ハハッ。晴翔には何のことやらって感じだよな。」
「そうだな。その手のことはよくわからない。すまん。」
「おい、今日はどうした?人間と話をしているみたいだ。」
「どういう意味だ?おれは生まれた時から人間だが?」
「ちゃんと会話が続いてる。」
「いつもちゃんと返事はしているぞ?」
「お前との会話は展開がない。返答して終了じゃないか。」
「そうか。気づかなかった。」
「晴翔こそ何かあったのか?」
「いや、いつも通りだ。」
『いつも通り』と返事をしながらも、偶然雨宿りで出会った彼女のことを思い浮かべていた。
あの後、彼女は無事に父親にお弁当を届けられたのだろうか。
ふと、頭によぎった。アメリカで何人も恋人がいたがプライベートな時間に彼女たちのことを思い出すことは一度も無かった。だからこれも初めての体験だった。
他の人間でも同じように興味が持てるのだろうかと疑問に思い、大勢の人間と関われる学校になるべく行くようにしてみた。そして、普段やらないことをやれば何か変わるかとも思い、クラスメイトに勧められた文化祭で行われるミスター聖麗学園のイベントにも参加してみた。結果、大勢に人に声をかけられるようになったが、彼女の様な人物は現れなかった。
何をやっていても彼女のことを考えてしまい、何も手につかなくなってしまった。
一体何なんだ?彼女から何か新種のウィルスでも感染してしまったのだろうか。
「…はぁー。」
無意識にため息がこぼれてしまった。
「どうした?ため息なんかついて。」
「修治、俺は新種のウィルスにでも感染してしまったかもしれない。」
「熱でもあるのか?」
「いや、熱はない。数か月前に偶然出会った女のことが頭から離れないんだ。彼女から何か脳内を浸食するウィルスをもらってしまったのだと思う。」
「はっ?なんだよそのウィルスって。」
修治に数か月前に出会った彼女の話をした。出会ってからずっと脳にその女の姿がこびりついていること。彼女のことを考えている間は心拍数が上がり発作の様に興奮状態になること。その女の様な後ろ姿の女性を見ると声をかけてしまいたくなること。完全に俺の脳は彼女のウィルスに感染し浸食されてしまっている。
「…晴翔、それって一目惚れしたんじゃない?15歳にして初恋だよ。」
「一目惚れ?初恋?」
「まぁ、初恋は実らないっていうからな~。どこの誰かもわからないんじゃ諦めるしかないだろうな~。」
修治は俺の肩を軽くたたき励ますような態度を取った。
「そうか、一目惚れか。俺は恋したのか。」
「随分と客観的だな。」
「初めてでよくわからないんだ。これが恋だというのなら俺は一生彼女一人でいい。」
「客観的な割には自己中な話だな。相手はお前の事を好きになるかもわからないのに。」
「どうしたら俺のことを好きになる?」
「俺も片想い中だからな…。お前の場合は、まず相手の名前を知るところからじゃないか?」
「…そうか。そうだな。」
兎に角彼女がどこの誰かを知ることが最優先だ。
机のパソコンに向かい情報を集めはじめた。
「晴翔、それ何やってんだ?」
「あの日の周辺の監視カメラにアクセスして彼女の父親をまず探す。会社がわかれば社員リストから父親の名前がわかるだろ?そしたら彼女も名前も住まいもわかるはずだ。」
「お前それ…。犯罪じゃねーか?」
「大丈夫だ。前に一度やってる。」
「はっ?」
「小学校の時、聖麗学園を止めた藤田いただろ?あいつの父親の仕事もこんな風に探した。でも大丈夫だった。」
「はぁ…。やっぱり、あんなに景気が良かった藤田の父親の会社が突然傾いたのはお前が原因か…。」
「あぁ。あの時より俺の知識も上がっているから今回も問題はない。」
「いやいや…。問題あるだろう…。」
宿題に出された数学のワークブックを修治に渡した。修治が他人の宿題を写すなんて珍しかった。
「あぁ、構わない。何かあったのか?」
机のパソコンに体を向きなおし、言葉だけ投げかけて聞いてみる。俺がこんな質問をするのも珍しかったので修治は驚いた様な顔をしていたと思う。
「ちょっと集中できなくてな…。恋煩いだ。ハハッ。晴翔には何のことやらって感じだよな。」
「そうだな。その手のことはよくわからない。すまん。」
「おい、今日はどうした?人間と話をしているみたいだ。」
「どういう意味だ?おれは生まれた時から人間だが?」
「ちゃんと会話が続いてる。」
「いつもちゃんと返事はしているぞ?」
「お前との会話は展開がない。返答して終了じゃないか。」
「そうか。気づかなかった。」
「晴翔こそ何かあったのか?」
「いや、いつも通りだ。」
『いつも通り』と返事をしながらも、偶然雨宿りで出会った彼女のことを思い浮かべていた。
あの後、彼女は無事に父親にお弁当を届けられたのだろうか。
ふと、頭によぎった。アメリカで何人も恋人がいたがプライベートな時間に彼女たちのことを思い出すことは一度も無かった。だからこれも初めての体験だった。
他の人間でも同じように興味が持てるのだろうかと疑問に思い、大勢の人間と関われる学校になるべく行くようにしてみた。そして、普段やらないことをやれば何か変わるかとも思い、クラスメイトに勧められた文化祭で行われるミスター聖麗学園のイベントにも参加してみた。結果、大勢に人に声をかけられるようになったが、彼女の様な人物は現れなかった。
何をやっていても彼女のことを考えてしまい、何も手につかなくなってしまった。
一体何なんだ?彼女から何か新種のウィルスでも感染してしまったのだろうか。
「…はぁー。」
無意識にため息がこぼれてしまった。
「どうした?ため息なんかついて。」
「修治、俺は新種のウィルスにでも感染してしまったかもしれない。」
「熱でもあるのか?」
「いや、熱はない。数か月前に偶然出会った女のことが頭から離れないんだ。彼女から何か脳内を浸食するウィルスをもらってしまったのだと思う。」
「はっ?なんだよそのウィルスって。」
修治に数か月前に出会った彼女の話をした。出会ってからずっと脳にその女の姿がこびりついていること。彼女のことを考えている間は心拍数が上がり発作の様に興奮状態になること。その女の様な後ろ姿の女性を見ると声をかけてしまいたくなること。完全に俺の脳は彼女のウィルスに感染し浸食されてしまっている。
「…晴翔、それって一目惚れしたんじゃない?15歳にして初恋だよ。」
「一目惚れ?初恋?」
「まぁ、初恋は実らないっていうからな~。どこの誰かもわからないんじゃ諦めるしかないだろうな~。」
修治は俺の肩を軽くたたき励ますような態度を取った。
「そうか、一目惚れか。俺は恋したのか。」
「随分と客観的だな。」
「初めてでよくわからないんだ。これが恋だというのなら俺は一生彼女一人でいい。」
「客観的な割には自己中な話だな。相手はお前の事を好きになるかもわからないのに。」
「どうしたら俺のことを好きになる?」
「俺も片想い中だからな…。お前の場合は、まず相手の名前を知るところからじゃないか?」
「…そうか。そうだな。」
兎に角彼女がどこの誰かを知ることが最優先だ。
机のパソコンに向かい情報を集めはじめた。
「晴翔、それ何やってんだ?」
「あの日の周辺の監視カメラにアクセスして彼女の父親をまず探す。会社がわかれば社員リストから父親の名前がわかるだろ?そしたら彼女も名前も住まいもわかるはずだ。」
「お前それ…。犯罪じゃねーか?」
「大丈夫だ。前に一度やってる。」
「はっ?」
「小学校の時、聖麗学園を止めた藤田いただろ?あいつの父親の仕事もこんな風に探した。でも大丈夫だった。」
「はぁ…。やっぱり、あんなに景気が良かった藤田の父親の会社が突然傾いたのはお前が原因か…。」
「あぁ。あの時より俺の知識も上がっているから今回も問題はない。」
「いやいや…。問題あるだろう…。」