花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
『内田琴乃』彼女の名前がわかった。幸運なことの彼女の父親はスピカグループの社員だった。扶養情報から簡単に彼女に行きつくことができた。

 さて、ここからどうするか…。

直接、彼女との出会いを作っても良いが、彼女自身その気がなければ、なんの発展もなく終わってしまうだろう。

 よし、外堀を埋めつつだ。

直ぐに親父がいる社長室に向かった。

「親父、頼みたいことがある!!!」

社長室のドアを開けると同時に親父に言い放った。

「おい、ノックもアポもなく社長室に来るもんじゃないぞ。晴翔が頼みだなんて珍しいな。」

「ここの社員の『内田康彦(やすひこ)』の娘の琴乃と結婚したい。」

「相手とは面識があるのか?」

「一度だけ彼女と会った。自己紹介してないから向こうは俺が誰か知らない。調べたらスピカの社員の娘だった。」

「突然結婚と言ったってお前はまだ未成年だろう。」

「あぁ、でも絶対に彼女だ。他にはいない。」

「…偶然にも内田とは大学時代からの友人だ。一旦、この話を預からせてくれ。」

「わかった。」

親父を信じ、社長室を出た。

その後、父親同士で話し合いをしたらしい。彼女の父親は俺の『仕事はできるが情のない人間』という噂を耳にしており、1度は断られた。しかし、俺が初めて他人に興味を持つことが嬉しかったのか親父も粘ってくれ、何とか婚約者という位置づけまでは持っていけた。これで他人に奪われることは無くなりほっとした。琴乃の父親からの条件で結婚をするとなれば、ちゃんと二人で恋愛をすること。と言われた。
恋愛をすると言われても、まともに友達すらいない俺は何をどうしていいのかわからない。
取り敢えず同じ学校に通い、クラスメイトとして出会う事しか浮かばなかったので、無理やり琴乃の両親を説得し、俺の通う学校へと転校手続きを進めた。

俺との婚約にあたり、琴乃からも条件が出された。『月に一度必ず贈り物をする』というものだった。

 なんだ、俺の経済力でも図りたいのか?

と思ったので最初の贈り物はこれでもかとお金をかけ、たまたま叔父が持っていた高級腕時計のカタログにあるペアウォッチを買い女性用を琴乃へ贈った。子どもの頃からの資産運用とCEOの給与で金なら腐るほどあったし、物欲もなく貯まる一方になっていたので贈り物にお金をかけることには抵抗がなかった。

初めて出会ってから約一年。夏休みが終わりやっと琴乃と出会えると思ったのだが、アメリカの会社でトラブルが起こり渋々日本を離れることになりお預けを食らった。
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