花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
今は夏休み明けでまだまだ気温が暑いので、暑さが落ち着いたら3人でお弁当にしようと話をして盛り上がる。

咲良さんと同じで深雪さんも私がイメージしていたご令嬢とは違い、とても気さくで話しやすくてこの出会いに感謝した。
勝手なイメージだが、飛び抜けたお金持ちのご令嬢って、とても我儘で相手の話を聞かないで一般人を下に見ている思っていたのだ。
深雪さんは私や咲良さんとは違う寮で生活をしているという。女子寮は私達が生活する『白百合館』とは別に『石楠花(しゃくなげ)館』、『牡丹(ぼたん)館』の2つあるそうで、深雪さんは『牡丹館』にいると言っていた。

「そうだ、琴乃さん、今度ぜひ咲良さんと一緒にいらして!今、マカロン作りにはまっていて、最近やっと上手にできるようになったのよ。」

「あら、素敵なご招待ですわ!琴乃さん、深雪さんのいる牡丹館は生徒が使用できるキッチンルームが何個もあるのよ!だから、花嫁修行を希望される方やお料理好きの方が牡丹館を申し込まれることが多いのよ!」

「へぇ〜、そんな特色があるんですね!甘い物好きなので、ぜひ伺いたいです!」

彼女たちと会話していると自然と言葉が丁寧になる。
今までなら友達になった人の家に誘われたとしたら、「行く行く〜!」なんて軽い感じで答えていたのだが、彼女たち会話のペースに完全につられてしまっている。

食事を終えるとウェイターさんが食器を下げに来てくれた。
今まで通っていた学校は済んだ食事の食器はトレイごと返却口へ各々戻すルールになっていたのだが、さすがセレブ学校だ。

しばらくそのまま3人で雑談をしていると、隣の席の柳くんと目があった。
軽く頭を下げて挨拶をするとこちらにやってきた。
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