花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
4月には桜が満開だった庭園も今ではすっかり葉桜になり新緑が生い茂っていた。
食事を終えると互いの両親にせっかくなのだから2人でデートでもしてきなさい。と言い、親たちは先にホテルを出た。
特に行きたい場所があるわけでもなく天気も良いので取り敢えず庭園に出ることにした。
先を歩く彼の手を勇気を出して自分から手を伸ばしてみた。
すると真宮くんは歩くのをピタッとやめこちらを振り向き、その顔は驚きで溢れていた。
「…いつも手を繋いでくれるのに今日は繋いでくれないから…。」
恥ずかしくて俯きながら話したので彼に声が届いたか返事がないからわからない。
「…琴乃から手を繋いでくれるなんて嬉しすぎる。修作を捕まえてまた部屋に連れ込んで良い?」
珍しく顔を真っ赤にして真宮くんが言った。
「そっ…それはダメ。」
何だか可笑しくなって2人で大笑いをした。
そして、笑いが止まった瞬間に真宮くんの顔が近づいてくる。
3度目のキス。
「琴乃。俺、お前と出会って世界に色がついた気がするんだ。あの日、お前が雨宿りせずに持っていた傘をさして通り過ぎていたら、俺はあのままモノクロの世界にいたままだった。18年前のこの日、生まれてきてくれてありがとう。そして、あの時、俺のことを心配して声をかけてくれて本当に感謝している。」
「私こそ真宮くんに出会えて良かったよ。いつも想っていてくれてありがとう。」
人目につかない桜の木の影に隠れ、木漏れ日がキラキラと降り注ぐ中、もう一度キスをした。
きっとこの先、数えられないくらいたくさんのキスをするだろう。その度に彼は愛の言葉を囁くのだ。
「俺の世界は琴乃で出来ている。だから、一生そばにいて欲しい。」
「…真宮くん、大袈裟だよ。ふふっ。」
「そんな事はない。今だって、琴乃に名前で呼ばれたいって頭の中はいっぱいだ。」
『名前で呼ばれたい』って、そんなことを真剣な顔をして言うのだから笑ってしまう。
「晴翔、大好き。ずっとこの気持ちは消さなきゃいけないものだと思ってた…。でも、どうしても消えてくれなくて…。」
「消されてたまるか。」
抱きしめられたまま気持ちを伝えると、彼は更にきつく抱きしめた。
謎の婚約者X。
咲良さんの予想通り、既に出会っていた。
正体は…。
私の大好きな人。
-- END --
食事を終えると互いの両親にせっかくなのだから2人でデートでもしてきなさい。と言い、親たちは先にホテルを出た。
特に行きたい場所があるわけでもなく天気も良いので取り敢えず庭園に出ることにした。
先を歩く彼の手を勇気を出して自分から手を伸ばしてみた。
すると真宮くんは歩くのをピタッとやめこちらを振り向き、その顔は驚きで溢れていた。
「…いつも手を繋いでくれるのに今日は繋いでくれないから…。」
恥ずかしくて俯きながら話したので彼に声が届いたか返事がないからわからない。
「…琴乃から手を繋いでくれるなんて嬉しすぎる。修作を捕まえてまた部屋に連れ込んで良い?」
珍しく顔を真っ赤にして真宮くんが言った。
「そっ…それはダメ。」
何だか可笑しくなって2人で大笑いをした。
そして、笑いが止まった瞬間に真宮くんの顔が近づいてくる。
3度目のキス。
「琴乃。俺、お前と出会って世界に色がついた気がするんだ。あの日、お前が雨宿りせずに持っていた傘をさして通り過ぎていたら、俺はあのままモノクロの世界にいたままだった。18年前のこの日、生まれてきてくれてありがとう。そして、あの時、俺のことを心配して声をかけてくれて本当に感謝している。」
「私こそ真宮くんに出会えて良かったよ。いつも想っていてくれてありがとう。」
人目につかない桜の木の影に隠れ、木漏れ日がキラキラと降り注ぐ中、もう一度キスをした。
きっとこの先、数えられないくらいたくさんのキスをするだろう。その度に彼は愛の言葉を囁くのだ。
「俺の世界は琴乃で出来ている。だから、一生そばにいて欲しい。」
「…真宮くん、大袈裟だよ。ふふっ。」
「そんな事はない。今だって、琴乃に名前で呼ばれたいって頭の中はいっぱいだ。」
『名前で呼ばれたい』って、そんなことを真剣な顔をして言うのだから笑ってしまう。
「晴翔、大好き。ずっとこの気持ちは消さなきゃいけないものだと思ってた…。でも、どうしても消えてくれなくて…。」
「消されてたまるか。」
抱きしめられたまま気持ちを伝えると、彼は更にきつく抱きしめた。
謎の婚約者X。
咲良さんの予想通り、既に出会っていた。
正体は…。
私の大好きな人。
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