花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
夕食が終わり部屋で寛いでいるとスマホアプリに真宮くんからメッセージが届いた。

『レセプション前のラウンジで待ってる。』

 えっ!?今から?

すっかりリラックスモードになっていたので急いで身支度をし、同室の2人に真宮くんから呼び出しがあった事を伝えてラウンジまで行った。

「お待たせ。」

「さぁ、行こうか。」

「行くって何処に?」

「まずは車に乗って。」

ホテルのエントランスに寄せているリムジンに乗り込む。
30分ほど車に揺られ付いたところは高台にある建設中の建物の前だった。

「ここは?」

建物の外壁にはネットが覆われていた。

「前に話したの覚えてる?真宮家の別荘だ。」

「リフォーム中って言ってたところ?」

「そうだ。子どもの頃、修治や咲良とも来たことがある。」

「何でここに?」

「来て。」

手を引かれ建物の中を通り抜け中庭に出ると大きなプールがあった。
工事中なので当然水は抜かれていた。
プールを囲むように芝生が植えられており、そこに真宮くんが寝っ転がった。

「ここは星がきれいなんだ。」

真宮くんの隣に横になり一緒に星を眺めた。

「ほんとに綺麗。クルーズパーティを思い出しちゃった。」

「俺も思い出してた。あの日、星に見惚れているお前をここに連れてきたいと思ったんだ。」

私の方に体を向けて頬を撫でる。

「こっそり抜け出して二人で星を眺めるなんて修学旅行の二人だけの思い出できたね。」

「そうだな…。悪くない。」

照れ隠しなのか体を上にし空を見つめ、握りしめる私の手を口元へ持っていきキスをした。
手が引っ張られた勢いのまま体を起こして私から真宮くんにキスをした。

「…なっ。何だよ。琴乃からキスするなんて…。」

いつも所かまわずキスをしてくる真宮くんなのに私からするキスに驚いて、顔を真っ赤にし、しどろもどろになる。

「ダメだった?」

「いいに決まってる。」

ごろんと転がると今度は真宮くんが私の上に覆いかぶさり長い時間キスをした。

「真宮くん…。息が苦しい。」

「こういう時は名前で呼べよ…。琴乃…、大好きだ。」

「晴翔…。私も晴翔が好き。」

二人で気持ちを確かめ合う様に何度も何度もキスを重ねた。

ホテルに戻り明りの下に行くと、お互い体中が芝だらけになっていることに気づき『子供みたいだね。』と吹き出して笑った。

もうそこには無機質な天才少年と言われていた真宮くんは完全に消えていた。
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