花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
「あ、宿題やってきた?数学の宿題でわからないところがあって…。」

感じの悪い真宮くんは放っておき、柳くんと話を続ける。

「数学?一応、やってきたけど自信ないな~。数学は晴翔が得意だよ。教え方もうまいし。」

「えっ?真宮くんって数学が得意なの?」

「得意だよな?晴翔。琴乃ちゃんに教えてあげなよ。」

「…べつに構わないけど。」

柳くんに勧められたが、態度の悪い真宮くんに教わるのは抵抗があった。
どうせなら優しいお兄さん的存在の柳くんに教えてもらいと思ったのが正直な気持ち。

「あのね、ここの問題なんだけど…。」

少しだけ身構えながら宿題になっていた数学のプリントとカバンから取り出し、真宮くんに見せた。

「この問題の場合は…。」

と、式の出し方など細かく教えてくれ、さらに応用問題も直ぐに作ってくれたので、次の数学の授業は完璧に理解できた。
ただ、もう少し愛想があれば…。

「ね!晴翔って教え方うまいでしょ。」

「うん、すごくよく分かったよ!ありがとう、真宮くん。」

「これくらいならいつでも…。」

と言って、タブレットの画面を見始めてしまった。
よく見ると照れて耳まで赤くなっていたのだが、私はそんな事には気がつかず、柳くんだけは気づいてクスリと笑ていた。
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