花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
乗船時に入り口で出欠を取っているため、船内では割と自由だった。
ダンスの会場となるメイン会場の舞台で校長先生と生徒会長からの挨拶が行われたが、船内のあちこちにあるモニターで挨拶の様子を流れていたので何処にいても大丈夫だった。

「あ、内田さんだ!」

私の名前がどこかから聞こえたのでキョロキョロと首を動かす。

「内田さーん!こっちこっち!A組のみんなこっちにいるよー!」

塩澤(しおざわ)くんが私たちを見つけ大きく手招きをしてくれた。
塩澤くんとは音楽室へ向かう途中に迷子になっていたところを助けてもらったのが縁で仲良くなった。

咲良さんと深雪さんも塩澤くんに気づいたので皆でそちらに向かう。

「あー、内田さん、紺色のドレスだったかー!俺の友達が内田さんのドレスの色を気にしてたから、こないだ廊下であった時に聞こうと思ってたんだよねー。そっかー!紺色だったかー!」

まさか編入して間もない私のドレスの色を気にしている人がいると人思わなかった。

 こないだ廊下で話した時って…
 真宮くんに『邪魔』って言われた時かなぁ?

まぁ、あの時は確かに狭い廊下の真ん中寄りで話をしていたから『邪魔』って言われても仕方がなかったんだけど…。
言い方ってものがあるわっ!

塩澤くんから友達の話をされ、返事に困っていると、

「ねぇ。あちらにいるのは真宮くんと柳くんじゃない?」

深雪さんは私と咲良さんの肩を叩いた後、彼らがいる方向を指差した。深雪さんが指差した方向にはその2人っぽい後ろ姿があった。2人とも長身だからタキシードを着るとなかなか様になってカッコ良買った。
< 26 / 113 >

この作品をシェア

pagetop