花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
クロークの混雑はすでに落ち着いており、すぐにバッグを受け取る事ができた。

バッグからスマホを取り出すと、

咲良さんからは

『柳くんといるわ。後で合流しましょ。』

深雪さんからは

『委員会の先輩に誘われたので行ってきます。』

と、メッセージが届いていた。

 もう!2人とも自由なんだから!

『今、クロークからバッグを受け取ってメッセージ見ました。コレから真宮くんと船内探検してきます。』とメッセージを2人に送った。

その様子を真宮くんが黙って見つめていた。

いつもなら『早くしろ』とか、『お前とろいんだよ』とか何かしら言ってきそうなのに珍しく今日は大人しい。

スマホをクラッチバッグにしまうと、

「出発できる?」

優しい声と表情で聞いてきた。

 なんだか調子が狂う…。

「えぇ。大丈夫。」

と、答えると2人でクロークを離れ、1番見晴らしが良いという最上階のオープンデッキに向かった。
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