花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
「はぁー…。」

授業の空き時間、机にだらんと体を伏せながら自然とため息が出た。
昨日、寮に帰ってから生徒会のHPを作るお手伝いを頼まれた話を咲良さんにしたが、ミスコンの話は恥ずかしくて出来なかった。
そして、話せないまま学校に来たのだが、未だタイミングを逃していた。

「何だよ、ため息なんかしやがって。不幸がうつるからやめろ。」

クラスメイトがため息付いて元気がないのに真宮くんには心配や励ましの言葉出てこないらしい…。

「…あんたは悩みなんてなさそうで良いわね。」

「ははっ、こう見えて晴翔は悩みだらけだよ。なっ?」

私たち会話が私の席を挟んで真宮くんとは反対側の席に座る柳くんに聞こえて様で会話に入ってきた。

「えっ?そうなの?」

「俺だって色々あるんだよ。」

「ふーん。色々ねぇ〜。」

横一列に並んだ席のまま3人で話していた。

「で、琴乃ちゃん、何に悩んでるの?」

柳くんの優しい声と言葉が身に染みる。
深雪さんは委員会だし、咲良さんは先生の手伝いで呼ばれて教室にいなかったので、取り敢えず2人に昨日のことを話した。もちろん、ミスコンの事を話せないでいることも…。

「へぇー、琴乃ちゃんがミスコンかぁー…。」

「柳くん!わかってるの!私がミスコンに出るなんて場違いなの分かってるからそれ以上言わないで!」

「そんな事ないよ、琴乃ちゃん可愛いもん。なぁ、晴翔。」

「俺にふるなよ。」

真宮くんの顔が赤くなる。

「どうしても出たくないなら先生に相談して断ったら?」

「うーん…。でも、一度引き受けたからには断りたくないし…。」

ミスコンに出たくはないが断るのも嫌。と言う複雑な気持ちだった。

「それなら俺たち応援するよ!今日も放課後はHPの件で生徒会室なんでしょ?咲良には俺から話しておくよ。」

「ありがとう!なんか二人に話したら少し楽になった!授業始まる前にお手洗い行ってくる!」

少し元気になった私は教室を出てトイレに向かった。

「一つ悩みが増えたみたいだな、晴翔。ミスコンなんか出たら琴乃ちゃんモテまくるぞ?」

「うるせぇ…。わかってる。」

私が席を立った後、そんな会話がされていた。
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