花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
放課後、約束通り生徒会室に向かった。
ドアをノックすると女性の声で『どうぞ』と返事があった。
ゆっくりドアを開けると、コの字型に配置された机で全員作業をしていた。

「失礼します、内田です…。」

と言うと会長が気付き私の方へ歩いてきた。

「さぁ、紹介するよ!夏休み明けからうちの学園に編入してきてくれた2年A組の内田琴乃さん。HP作成のお手伝いをしてくれる事になった。皆、よろしく頼むよ!」

と、会長が私を皆に紹介してくれた。

「宜しくお願いします。」

緊張から普段より声が小さくでた。
奥の席に座るショートボブのメガネを掛けた女子生徒が立ち上がりこちらを向いた。

「3年の砂金 彩(いさご あや)です。副会長をしております。よろしく。」

副会長が挨拶すると、それをきっかけに次々立ち上がって自己紹介をしてくれた。

「はーい!次は私!昨日あったよね、書紀の牧野 玲奈(まきの れな)です〜!」

「僕は会計の古賀 一輝(こが かずき)。内田さんと玲奈と同じ2年だよ!」

「ねぇ、会長!せっかくだから歓迎会しようよ!」

自己紹介が終わると牧野さんが会長に言った。

「たまにはそういうのも良いと思いますよ。会長。」

続けて副会長が賛同した。見た目はとても真面目そうなので一見学校に関係のないことは反対しそうだったので意外だった。

「先月の懇親会費が残りもありますよ!学食からスイーツや軽食をデリバリーすれば5人分は充分です!」

会計からもOKが出てしまえば会長には断る理由がなかった。

「そしたら、今の仕事が終わった人から歓迎会の準備をしよう!」

「「「やったー」」」

副会長、書紀、会計の三人が声を揃えて喜んだ。

 えっ。生徒会ってこんなノリなの?

歓迎会をすることが決まると、ここから四人の仕事は早かった。
会長が会計の古賀くんに予算を確認すると学食に電話をいれメニューと金額を確認しオーダーをした。
その間に副会長の砂金先輩と書紀の牧野さんは生徒会室の机のレイアウトを変えてテーブルクロスとコップなどカトラリーを用意し、古賀くんはパソコンに向かい『ようこそ!内田さん!』と書かれたパーティーバナーを作成し印刷が終わったものから壁に張り出していった。
< 46 / 113 >

この作品をシェア

pagetop