花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
学食からオーダーしたスイーツなどが届くとテーブルクロスが敷かれた机に置いていく。
そして、あっという間に歓迎会の支度が終わってしまったのだ。
おそらく決定から30分程度だった。

「さぁ、内野さんはお誕生日席に座って!」

会長に勧められ椅子に座る。
皆が着席すると会長の音頭で乾杯をした。
しばらく雑談をしていると、

「内田さんって、なんでこの学校に転校してきたんですかぁ?ずっと海外にいて日本に戻ってきたからとかですかぁ?」

「確かにこの学校に転校生って珍しいものね。」

牧野さんと砂金先輩がこの学校への転校の理由を聞いてきた。
別に隠す必要もないので、正直に話す。

「実は、夏休みに突然婚約することになりまして…、婚約者の希望でこの学校に編入することになったんです。知らないうちに手続きも全て完了していて…。実家は普通の家庭なので、その婚約者のおかげでこの学校に通えてます。」

「確かにこの学校の学費って高くて有名だもんねぇ〜。普通の家庭じゃ無理だよ〜。その婚約者ってどんな人なの?イケメン?」

古賀くんがロールケーキを食べながら言った。

「…それが、会ったことないんです。その上、相手が誰なのかも教えてもらえなくて。」

3人はとても驚いていたが会長だけは驚く様子もなく黙って聞いていた。

 やっぱり、会長は何か知ってるのかしら?

寮の同室の咲良さんと老人説と中年ハゲデブ説を話したら会長以外は一理あるかも。と同意してくれたが会長だけは何だか笑いを堪えている様だった。

「あははっ。こんなにボロクソに言われて内田さんの婚約者が何だか可哀想になってきたよ。もしかするとめちゃくちゃ稼いでいる青年実業家かもしれないよ?」

「最近は画期的なアプリを作ったと社長になったって小学生もいますしね〜。会長の説もあるかもしれないですね!」

古賀くんが会長の説にのった。

「そんな優秀な人が私と婚約するメリットがないですよ~。」

「一目惚れってやつじゃないですか?」

古賀くんは会長の説に前向きの様だった。

「いやいやいやっ!私なんかに一目ぼれするような人はいませんよー。子どもの頃知らない男のコからブスッて叫ばれたことありますし~。」

「それぞれの好みもありますが、内田さんはブスではないですよ。」

「そうよ!女の子にブスって言う男の子は死刑よっ!」

砂金先輩と牧野さんがフォローしてくれた。やはり女子同士。自然と味方になってくれる。

「死刑って…。あはは…。僕、妹と喧嘩したときにブスって言っちゃったかも~。僕も死刑だ~」

古賀くんは冗談を言いながら、牧野さんの発言に引いた笑いをしていた。

「琴乃ちゃんは普通に可愛いと思うよ。」

古賀くんと牧野さんのやり取りをニコニコ見守りながら会長も私へフォローしてくれた。

「いやぁん!!会長!内田さんのこと名前呼びです~!私も名前で呼びたーい!」

「琴乃って名前可愛いよね!同じ学年だし、僕も琴乃って呼ぼうかな!」

「それなら私だ内田さんって呼ぶのも変だわ。琴乃さんって呼びます。」

おかしな流れではあるが生徒会メンバー全員から苗字ではなく名前で呼ばれることになった。
転校してきたばかりで友達がほとんどいないので、一気に仲間ができた気がしてとても嬉しい気持ちになった。
そこからしばらく会話を楽しむとスイーツもなくなったので片づけをし、HPをどのようにするか打ち合わせをした。
前回の生徒会選挙では思いのほか人数が集まらなかったそうで、生徒たちが生徒会メンバーになりたいと思える親しみのある内容にしたいとのことだった。しかし、生徒会だけのページではなく、学校のHP内の一部になるため外部の人が閲覧しても問題ない内容にしたいという希望もあった。

 オフィシャルだけどカジュアルに…
 難しいな…。でも、がんばろ!

最終下校のチャイムが鳴ったので、生徒会室の片付けと施錠を行い学校を出た。
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