花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
早速、次の日の放課後からお芝居の練習や衣装、大道具、小道具それぞれの担当に分かれて打ち合わせや仕事を始めた。
私と深雪さんは小道具なので、優しい魔法使い、悪い魔法使いの杖や糸車などを教室の後ろの端っこで作り始めた。
台本は昨日のうちに学校から支給されているタブレット端末に共有されており、北海道にいた真宮くんもその日のうちに目を通していたようだった。

「さすが天才真宮だなぁー!もう台本全部暗記してるよ…。」

文化祭実行委員の佐々木くんが真宮くんの記憶力の良さに改めて驚いていた。

「このくらいなら一度読めば頭に入る。」

相変わらずぶっきら棒に答える。

「やっぱり晴翔くんって素敵!」

塚田さんの目が輝きだした。彼女にとって真宮くんの口の悪さはあまり関係ないようだ。
それに気づいた真宮くんが少し彼女と距離を取る。
咲良さんは真宮くんの逃げ切り勝ちと言ってきたが、戸塚さんはもしかするとまだ現在進行形なのかもしれなかった。

「あ!琴乃だ!」

廊下から私の名前が聞こえたので、作業を止めて顔を上げると、生徒会の古賀くんが手を振ってくれていた。

「あ!古賀くん!」

教室の奥から手を振ら返すとそのまま行ってしまった。文化祭が近いのでミスター、ミス聖麗学園のコンテスト意外にも準備があるため、生徒会メンバーも毎日放課後仕事が山ほどありとても忙しそうにしていた。

「古賀くんと知り合いなの?」

「生徒会のHPを作る手伝いをするのに生徒会室に出入りするからそこで仲良くなったの。」

「古賀くん、ワンコ系だから可愛いってファンが多いから気をつけて下さいね…。」

「ファンがいるの?そんなにモテるだぁ。でも、話しやすいしなんか分かるかも。」

「中には過激な方もいらっしゃるみたいだから、気を付けてくださいね。」

「ありがとう。気を付けるよ!」

「古賀くん、『琴乃』って呼び捨てでしたね。いつの間にそんなに仲良くなられたんです?」

男の子から呼び捨てにされていたのが気になったようだった。

「初顔合わせで歓迎会をしてくれて、なんか、流れで生徒会メンバーからは下の名前で呼ばれることになっの。だから、牧野さんや砂金先輩も下の名前で呼んでくれてるんだ。あのメンバーだからなのか、この学校の個性なのか生徒会メンバーみんな凄くフレンドリーで…。」

「そうだったんですね。でも、くれぐれも古賀くんのファンには気をつけてください!」

「うん。そうする。」
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