花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
お腹が膨れた後は3人で校内を回った。2人とも特に予定がないので、この後のミス聖麗のイベントを見にきてくれると言ってくれているのだが、どうせ自分は人数合わせなので他にやりたい事があればそちらを優先する様に伝えた。

「本当は2人で回りたかったんじゃない?」

柳くんに聞こえないようにこっそり聞くと

「彼とはいつでも2人になれるし、2人になってもどうにもならないから3人の方が楽しくて良いですわ!」

と咲良さんも柳くんに聞こえないようにこっそり返事してくれた。

仲良し5人のグループトークに深雪さんから彼氏となった先輩とのラブラブツーショットの画像が送られてきたので、私たち3人もメッチャ仲良しショットを撮って送信した。

すると直ぐに真宮くんからこないだとは違う怒った様な、いじけている様なイラストのスタンプがいくつか送信されていた。

『晴翔も恋人(塚田さん)とツーショット撮らないの?(笑)』

柳くんがメッセージを送ると、

『修治、お前嫌い。』

と返ってきた。イライラして不貞腐れている姿が目に浮かび笑ってしまう。

「真宮くんって、天才だし口が悪くて人を寄せ付けない感じがするのに2人にとってはめちゃくちゃ弄られキャラだよねっ!」

「今ごろ気付きました?」

「そうだね、晴翔は弄られキャラだねー。」

3人で笑い合った。楽しい時間はあっという間に過ぎて、遂にミス聖麗参加者の集合時間が迫ってきた。

「そろそろ時間だから私いくね!」

「応援に行きますわ!絶対優勝よ!」

「頑張ってね!」

2人にエールをもらい会場となる学校のアリーナへと向かった。
集合場所にに向かうとサイズフリーのノースリーブの白いワンピースがあり、バッグヤードに用意された更衣室で着替え待機スペースにある椅子に座った。去年の優勝者は参加できないルールになっている為、塚田さんの姿が無くて何と無くホッとした。
少しの間そこで待機していると、ガヤガヤと入り口のあたりが騒がしくなった。
何だろう?と目をやると、眠り姫の格好をした真宮くんが凄い勢いで入ってきたのだ。

 何やってんだろ?もう直ぐ始まるのに…。

司会者っぽい生徒に何か話しをすると真っ直ぐこっちに向かってきた。

「琴乃こっちこいっ!」

「はぃっ!?な…一体何?」

勢い良く腕を掴まれ人気のない倉庫へと連れて行かれた。倉庫の扉を閉めて内鍵を閉めると、真宮くんは自分の着ていた眠り姫のドレスを脱いだ。

「ばかっ!突然服なんか脱がないでよっ!!」

目のやり場に困り真宮くんと反対を向いて注意する。

「その服脱いで、これを着てろ!!俺は向こう向いて見ないから!!」

「はぁっ!?コレからミス聖麗学園のイベントが始まるんだけど!」

「いいからサッサとしろっ!!」

勢いに負けて、真宮くんの言う通りにコンテスト用の白いワンピースを脱いで真宮くんが着ていた眠り姫の衣装に着替える。
さっきまで真宮くんが着ていた衣装からは彼のシトラスの香りがした。

「きっ…着替えた。よ?」

真宮くんは私が着ていた白いワンピースを奪い取るとそれを着た。

 えっ?何する気??

「お前はミスコンに出るなっ!こっ…婚約者がいるんだろうっ!?」

「えっ?」

「観客席に修治と咲良が居たからそこにいろっ」

着替えが終わると言い捨てる様に言って倉庫を出て行ってしまった。

 全く状況が理解できない…。

取り敢えず言われた通りに観客席にいる柳くんと咲良さんのところへ向かった。

「あれ?琴乃ちゃんこんな所で何やってるの?コンテスト始まったよ?」

「琴乃さん、その服って…」

さっきまで真宮くんが着ていた眠り姫の衣装を身にまとった私を見て2人も動揺する。

「待機場所にいたら突然真宮くんが来てミスコンな服と交換させられたの…。」

「あいつ、まさかっ!」

3人でアリーナの舞台を見つめる。

「さぁー!最後の出場者です!2年A組真宮 晴子(はるこ)さんでーす!」

すると舞台には眠り姫のかつらをつけ、他の出場者と同じ白のワンピースを着た真宮くんが登場した。遠くの席からも女装だと解るその姿に会場が爆笑となった。

「晴翔があそこまでやるなんて!」

柳くんは大爆笑し、咲良さんも普段見ないくらい大笑いをしていた。
その後、会場にいる人達の投票となったのだが、ウケを狙って真宮くんに投票する人が多く、聖霊学園初のミスター、ミス両方優勝し二冠制覇した男となった。
< 57 / 113 >

この作品をシェア

pagetop