花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
真宮くんと二人で教室に戻ると、塚田さんが鋭い視線でこちらを見ていた。
真宮くんはそんな塚田さんを無視して自分の席に座ったので、私も後をついていく様に隣の自分の席へと座った。

真宮くんはあの後、塚田さんとの関係を全否定して逃げるように教室を出て行ったそうだ。

終礼が終わるとチラチラとこちらを見てくる男子生徒がいた。まだ、クラス全員の名前を覚えていないので彼らの名前はわからない。

 真宮くんと2人で戻ってきた事を噂してるのかなぁ?

チラチラとこちらを見てきていた生徒が立ち上がると、

「サッサと行くぞ!修治たちも!」

真宮くんは自分のカバンと私の鞄を持ち教室の出口へと向かった。

「おっ?番犬が反応した。あはは。」

さっき、婚約者の代わりに私に虫がつかないように後夜祭へ一緒に参加してくれると言う話を柳くんにもしていたのだろうか?柳くんが笑ってた。

後夜祭は校庭の隣にある芝生のグランドで行われた。沢山のキッチンカーが並んでおり、生徒であれば誰でも無料で頼める事が出来き、ピザやケバブは大人気で長い行列を作っていた。

どんなに長い行列でも、友達同士で並べば話も尽きないし楽しかった。

「琴乃だー!今年のミス聖麗もいるー!」

 この声と雰囲気は…

振り返ると生徒会の腕章を付けた古賀くんが手を振っていた。相変わらずのわんこキャラで懐いてくる。
そして、明らかに嫌そうな顔をした真宮くんと笑いを堪えている柳くん。

「琴乃何食べてるのー?」

古賀くんが呼び捨てしたのが気に入らない様で真宮くんのおでこにシワがよると、柳くんが吹き出しそうになっていた。
名前を呼び捨てするくらいどうでもいい気がするのだが、真宮くんには婚約者がいるのにこの呼び方が不誠実に見えているのかもしれない。

「チョコバナナクレープだよー」

「美味しいそうだね!ひと口ちょうだい!」

古賀くんはパクリと私のクレープにかじりついた。

「あれ?琴乃のほっぺにクレープのチョコついてるよ?」

そのまま古賀くんにほっぺを舐められそうになのを見て、真宮くんが即座に手を入れて阻止する。

「本当だ、子供みたいなことしてんじゃねーよ。」

阻止した手でほっぺについたチョコを拭い取ってくれた。

「…ありがとう。」

チョコを取ってくれた真宮くんにお礼を言った。

「はぁー。どちらが子供なのかしら?」

咲良さんは小さな声で呟き柳くんに視線をおくる。

「本当にそうだね。」

「ふーん。そーゆーこと?琴乃、僕まだパトロールがあるからまたねー!」

あっという間に古賀くんは何処かに行ってしまった。

 そーゆー事って、どーゆー事?

私1人疑問が残った。
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