花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない

婚約者からのお願い

今日は生徒会室でホームページの作成をしている。先日の文化祭の写真を掲載用と選り分けていた。古賀くんは真宮くんに注意をされてから少し距離を置いてくれるようになった。
特に今日は文化祭の収支計算と報告を行わなければならず、集中して作業をしている。

「会長〜、もぉすぐクリスマスですよ〜。生徒会でクリスマスパーティーやりたいですー。」

牧野さんはいつもの甘えた声で会長にお願いしてみる。

「楽しそうだけどなぁー。」

チラリと忙しそうにしている会計である古賀くんに視線をやる。

「会長、全校でクリスマスパーティするほど予算ないですよー。」

文化祭の収支報告をまとめているパソコンの画面から目を離さずに答える。

「このメンバーでやるのはどうかしら?」

「彩先輩ナイスアイデア〜!」

テストも終わりスッカリ生徒会室はクリスマスモードになっていた。
クリスマスパーティを計画する話を聞きながら文化祭の写真をホームページにアップすると会長にこれで良いか確認を頼んだ。会長は確認のために私の直ぐ横からパソコンの画面を覗き込む。

「ココなんですけどもう少し文字のサイズ大きくします?」

「このままでいいよ。これを公開ページにしたら後は来年またお手伝いに来て。お疲れ様!って、俺は卒業していないけど…」

聖麗学園の生徒会選挙は毎年6月に行われる。次のホームページの更新はメンバーが変わるその時期を予定しているようだった。

「はい、わかりました。では、公開ページに設定しますね。」

パソコンのマウスを操作して公開ページに対応させる。

「…ねぇ、その腕時計。」

「これですか?」

制服の袖を上げて会長に腕時計を見せる。

「前にクルーズパーティの時に着けてたよね?誰とペアなの?例の婚約者?」

「えっ?コレってペアウォッチなんですか?」

「ぷっ、知らないでつけてたの?」

「はぃ…お恥ずかしながら。」

「へぇー。それ、そこのブランドの限定販売でペアで500万くらいだったかなぁ?」

「そっ…そんなにするんですか!?」

「うちの父親がカタログ見ながら結婚記念日にと購入を悩んでまたからおぼえてるよ。」

「知らなかった…。」

「私も見たいですー!」

牧野さんが腕時計見たくて乗り出してきた。

「ブレスレットタイプですね!素敵ですぅ〜」

「琴乃、その婚約者からなの?」

「そう。婚約者からの贈り物なの。初めてこの学校の寮に来た日に届いてたんだ。入学祝いだから時計なんだと思ってた。」

「そんな高級品を送る相手はなかなか稼いでいらっしゃる方なんですね。以前、ここの学費も出してくださってるっておっしゃってましたし…。」

副会長の砂金先輩と古賀くんも覗き込んできた。

「ほんと、僕のライバルはどんなやつなんだ!?」

「年上ってだけで頼れる男性ってイメージ!素敵!」

「その時計、お得意さんにだけにカタログが送られてくるんだ。そこのブランドの時計を愛用している人だからなかなかの人だと思うよ。」
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