花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
「あら、素敵な時計ね。」

咲良さんが後ろからのぞき込んできた。

「その時計、限定のものよね。確か世界で10コだったとか。どなたからの贈り物?お父様から?」

うちのお父さんのお給料ではこんな高級な腕時計は買えない…。

「いえ…。父からではなくて…。婚約者からです。」

「あら、あなたは婚約者がいる方なのね。」

咲良さんは婚約者と聞いて普通に彼氏がいる的な感じで受け流す。

「咲良さんは私に婚約者がいるって聞いて驚かなの?普通の高校生では婚約者っていないですよね…。」

咲良さんはソファに戻り、ティーカップを持ち上げながら

「そんな珍しいことではないわ。政略的な話で生まれた時から相手を決められている方なんてこの学園にはたくさんいらっしゃるわよ。」

なるほど…。と納得した。

咲良さんのご実家は代々続く料亭でお偉い政治家の方々が良くいらっしゃる有名なお店らしい。

彼女的には全寮制の閉鎖的な学校よりも、海外学校でデザインを学びたかったらしいが、ご両親の母校ということで入学したそうだ。

彼女もやはり婚約話が上がったそうだが、ことごとく話を潰しているらしい。

我が家は普通の家庭で突然の婚約話でこの学校へ編入することになったと説明すると目を輝かせ『何その面白い話し!』と喜んで聞いていた。

「…そうね。確かにあなたの婚約者はかなりお年を召しているのかもしれないわ!」

と私の推理に納得してくれた。

「わかったわ!琴乃さん、あなた何処かでお年寄りの方に親切にされたんではなくて?そのお礼に遺産を譲るための婚姻なんじゃないかしら??」

確かに!それならこのプレゼントと結婚の話で納得がいく。

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